「アトリエウチノ」の意味
連日の猛暑、ここ上野桜木・谷根千界隈はいつもならのんびり散策する方々で賑わうエリアですが、このところ蝉の鳴き声だけが響き渡っております。
駅からも近くない当店に、わざわざ足をお運びくださる皆さまには心よりありがたく感謝しております。
さて本日は、よく店頭で聞かれる「アトリエウチノ」という屋号について、お話ししたいと思います。
“ギャラリー”ではなく“アトリエ”
開業時にお店の名前を決める時、いくつかのポイントに沿って考えました。
奇をてらっていないこと、“いま風”を意識しないシンプルな呼称であること、海外の方にも伝わりやすいこと、そしてアート関連の言葉を入れること。
結果的に私の名前を入れ込んだ、きわめて直球な店名となったわけです。
画廊の名前というと、「画廊」「ギャラリー」「アート」「美術」「コンテンポラリー」などのワードを掲げたお店が多いように感じます。
当店の「アトリエ」は、作家が作業を行う“工房”を指すので、どちらかというと絵画教室や職人さんの作業場に使われるのが一般的です。
お客様との会話の中で、「アトリエ業界は長いのですか?」とか、「ご自身も絵を描いていらっしゃるのですか?」などお尋ねいただくことが多く、なんだか混乱が生じているかも?と感じたため、こうしてキーボードを叩いている次第です。
ギャラリーは良い作品ありき。アーティスト本位でありたい。
「アトリエ業界」というか「ギャラリー業界」での経験は短くありませんので、お蔭さまでこうして自身の画廊をオープンすることとなりました。
昔は絵を描いていましたが(そこそこ本気で)、良い作品を次々生み出すアーティストを見るうち、むしろこうした作家たちに一番近い場所で、作品の良さを紹介する仕事がしたいと思うようになりました。
ビジネスを考えると、売れ筋の絵、流行の作品を扱うのが正解なのでしょう。
しかし当店では、アーティストが魂を込めて手がけた作品の魅力を、当店の言葉でお客様にお伝えすることが仕事だと思っております。
「売れる作品を扱うのではなく、良い作品を売る。」
ここに画商としての醍醐味があるものと感じます。
アーティストが作品を制作するアトリエをイメージした空間で、アートとの出会いを作り出すアトリエ(工房)を育てていきたい。
時代のニーズに沿わないかもしれません。
作家本位の姿勢をご理解いただくのに時間がかかるかもしれません。
けれども、これまで名前も知らなかった作家の作品と出会い、お客様のコレクションに加えていただけた瞬間は、画商冥利に尽きるのです。
皆さま、どうぞお付き合いのほど、よろしくお願いいたします。