パウル・クレー「『12の水彩画』より 幻影透視図」
詳細
作家:パウル・クレー
作品名:『12の水彩画』より 幻影透視図
年代:1964年
技法:ポショワール ed.500
イメージサイズ:24.5×31.2cm
額サイズ:69.2×52.8×1.9cm
サイン:版上有
備考:「Procede Jacomet」のエンボス有
プライス:Sold Out
作品について
20世紀を代表するスイス出身の巨匠、パウル・クレー。
透明感のある色彩と幾何学的なフォルムを操り構築した絵画世界は、同時代のどの様式にも属さないオリジナリティに溢れています。
こちらは、クレーの描いた水彩画を元に、1964年にパリ・ベルクグリューン画廊の監修により出版された挿画本からの一作です。
ポショワール(Pochoir)とは、合羽版や型紙摺りとも呼ばれる古くからの孔版技法のひとつ。
くり抜いた金属板の孔に刷毛を用いて彩色するステンシル製法のことで、像の反転しない版画を刷ることができる点が特徴です。
複雑な工程と技術を要するため、『12の水彩画』では、ポショワールの名刷り師と呼ばれたダニエル・ジャコメが製版を手掛けました。
全12点の作品それぞれにクレーの息子、フェリックス・クレーのテキストが添えられた、500部限定の大変希少なシリーズとなります。
本作の原画は、1920年に描かれた《幻影透視図》という水彩画です。
手前から奥に向かって広がる室内の情景。
一見すると、初期ルネサンスに完成した「一点透視図法」で描かれているものと感じますが、目線を誘導する直線は不可解な角度で引かれ、私たち鑑賞者を困惑させます。
中央下方には、人物が横たわる寝台。
連なる線を辿る先にある赤いカーテンの部屋から、飛び出してきたのか、または吸い込まれていくのか。
あちこちに浮かぶ「目」のようなフォルムも、まるで誰かから見られているかのような不穏な雰囲気を強調しています。
意図的に出現させられた不安定な空間に、淡く美しい色彩が重なっています。
見れば見るほどクレーの仕掛けたマジックにはまってしまいそうな、大変興味深い作品です。
画面にはクレーの版上サインの他、ダニエル・ジャコメの製版を示すエンボスがございます。
かまぼこ型のゴールドの額を合わせています。
シンプルなデザインは絵柄の美しさを引き立てる仕上がりとなっております。