2024-05-11

ジョルジュ・ルオー「『ミセレーレ』より 我ら自らを王と思い」

ジョルジュ・ルオー ミセレーレ 我ら自らを王と思い

詳細

作家:ジョルジュ・ルオー

作品名:『ミセレーレ』より 我ら自らを王と思い

年代:1923年

技法:ヘリオグラビュール・シュガーアクアチント・ドライポイント 他 ed.450

イメージサイズ:58×42cm

額サイズ:83.3×66.1×3cm

サイン:版上有

プライス:Sold Out

作品について

20世紀フランスを代表する画家、ジョルジュ・ルオー。

宗教主題を中心に、道化師や踊り子といった苦悩する人間をモチーフにした数々の名作を残しています。

こちらは、版画集『ミセレーレ(MISERERE)』に収録された一枚です。

『ミセレーレ』とは、ラテン語で「憐れみたまえ」、すなわち「慈悲」を表す言葉です。

当初、父の死をきっかけに1912年頃から制作された第一部を「ミセレーレ」、1914年の第一次世界大戦勃発以降に取り組む第二部を「戦争」と名付け、二部構成から成る全100点の連作として構想されていました。

その後、ルオーと専属契約を結んでいた画商ヴォラールの発案で、1922年から1927年にかけて完成した白黒銅版画全58点に厳選し、パリの刷り師・ジャックマンの手により500部印刷されることとなります。

ヴォラールは自身が没するまで作品を手元に置き続けますが、戦乱やヴォラールの死を経て、彼の遺品の中から発見された版画にはいくつかの欠損・破損が生じていました。

そのため、1948年になってようやく450部の限定枚数にて刊行されるに至ったのです。

本作「我ら自らを王と思い」は、慈悲をテーマとした第一部の7点目に当たる作品です。

冠を被り、一瞥をくれる男。

残された完成に至るまでの中間段階を見ると、実は初期の人物の右手には笏が握られていました。

その後、笏は風車へと描き換えられ、最終的に完全に消去されたのです。

顔立ちも、いわゆる王様風の風貌から、ステートを重ねるごとに次第に完成作の姿へと変遷を見せます。

「我ら自らを王と思い」という画題には、特定の身分や階級を超えて、私利私欲に溺れ尊大に振舞うあらゆる人々を痛烈に批判する、ルオーの強いメッセージが込められているのかもしれません。

『ミセレーレ』で、画家は人間の孤独や寂しさ、不条理や愚かさをあぶり出し、避けられない死と、キリストによる救済と向き合います。

その強烈な精神性を表現するため、銅版画の様々な技法を組み合わせて作られた作品群は、ルオーの画業における最高傑作と言われています。

太く荒々しい黒の線で映し出される絵画世界には、魂を直接震わせる力強さがあります。

風刺的な内容を描きながらも漂う古き宗教画を思わせる崇高さは、他に類を見ません。

画面左下には、ルオーの版上サインと、原版の制作年がございます。

幅4cm程の黒金の額を合わせてあります。

赤みのあるアンティークゴールドの色合いが、作品とよく調和しています。

100年以上もの年月を経た版画のため、シートにはヤケが見られます。

また、年代物の額にも小傷やスレなどの経年変化が生じています。

展示する上でほとんど気にならない程度かと思われますが、古い作品の持つ特性として予めご理解くださいませ。

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