イコン展 ー天とわたしをつなぐ窓ー

東方教会における礼拝の場で欠かすことのできない「イコン」。
正教文化圏で発展し、幾度もの逆境や宗教論争を経験しながらも各国に広がりを見せ、今もなお伝統的な形式を重んじながら描かれ続けています。
今展では、ロシア・ギリシャ・東欧諸国で制作された古い板絵を中心にご紹介し、キリスト教にまつわる聖像の根底に流れる精神と、時を超えて私たちを魅了する優れた芸術性に、宗教・美術・骨董という多角的観点から迫ります。
開催概要
2025年10月25日(土)-11月16日(日)
open 11:00~18:00
closed 10月30日(木)・11月4日(火)・10日(月)
オンラインショップページ → こちら
オンライン販売期間 10月28日(火) 11:00-11月16日(日) 18:00
※ お買い上げいただいた作品は、会期終了後のお引き渡しとなります
※ 会期中は常設展を同時開催いたします
イコンについて
【 イコンの誕生と歴史 】
「イコン(Icon)」は、古代ギリシャ語で「像」や「似姿」を意味する「エイコーン」が変化した言葉で、日本語では「聖像画」と訳されます。
主にイエス・キリストや聖母マリア、預言者や聖人、聖書にまつわる場面をテンペラで描いた板絵のことを指し、キリスト教美術の原点として、過去から現代に至るまで連綿と継承・研究が続けられています。
伝承によれば、その起源は遡ること約2000年前。
キリストが自らの顔を布に押し当てて写し取ったとされる「聖顔」に端を発し、東ローマ帝国(ビザンティン帝国)にて栄えた正教会の教えを基軸に発展を遂げます。
現存する最古のイコンは壁画ですが、6世紀頃になると次第にビザンティン美術としての特色ある様式が形成され始めました。
8~9世紀にかけて巻き起こった偶像破壊運動(イコノクラスム)では多くの名作が破壊されたり、度重なる弾圧ごとに苦境に立たされるも、迫害を逃れて移動した修道士や画家たちによって各国へ広がりを見せ、地域性を築きながら優れたイコンが次々と生まれていったのです。
【 イコンの精神と表現 】
「西欧の宗教画」と「正教会を拠り所とするイコン」の違いは、根幹を支える精神の差にあると考えられています。
西欧では、絵画や彫刻を通して宗教的な感動と敬虔な気持ちを引き出すことが目的とされ、聖なる存在の理想的な姿を表現しようとする、いわば人間主体の傾向が見られます。
一方で伝統的なイコンは、神やキリスト、聖母との精神的一体化の手段としての機能を重要視するため、描き手の名や独創性は必要とされません。
匿名のイコン画家たち(多くは修道士)は、神のしもべとして粛々と在るべき正しい聖像を過去の作例に倣いながら繰り返し模写し後世に伝えていくことに務めました。
近代以降の芸術で目的化されるオリジナリティを排除し、一心不乱に聖なる姿を描き継ぐ行為、そしてその中から意図せず立ち現れる豊かな個性。
一般に「写実」という言葉で連想する再現性とは対極とも言える、平面的かつ抽象的な聖者たちの姿には、かえって強い超常性・精神性が宿ります。
宗派の如何を問わず鑑賞者がイコンに心動かされる所以が、ここにあるのではないでしょうか。
イコンはしばしば、神の世界を映し出す「窓」であると例えられます。
この考え方の真髄は、『旧約聖書』の「創世記」に綴られた「神は神に似せて人をつくられた。」という一節に集約されています。
すなわち、人間は神を複写した姿であり、原罪なくして身籠った聖母、さらには人であり神でもあるキリストも私たちと同じ姿形を持つがゆえ、神の肖像を具現化する存在としての我々との共通点を見ることができるのです。
こちらを見つめる聖像と静かに向き合い、自分自身が聖者たちと同じく神の似姿なのだと悟る時、天上へと続く窓が開き、神との深い交わりが実現されるのかもしれません。










